大川周明『中国思想概説』

大学の根本精神 一


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『大学』の根本精神


 今日の政治家は、其の政策並に行動の基礎を、専ら『事実』又は「経験』の上に置いて居ります。内治と外交とを問はず、実際政治に於て、事実又は経験を重んじなければならぬことは言ふ迄もありませぬ。之を無視しては如何なる政治も不可能であります。併し乍ら之と同時に、事実又は経験が、直ちに政策の根抵となり得ぬことも、また明白至極であります。何となれば、経験又は事実は、不断に変化し流転するからであります。流転息むなき事実を、政策・主義・方針の基礎とする時は、其の政策なり主義方針なりが、事実の変化に伴ふて動揺変化するのは当然のことであります。常に事実に左右されて取止めもないやうな主義方針は、結局主義方針が無いのと同一であります。
 私は吾国朝野の支那問題に対する態度に於て、其他の総ての場合と同様に、明かに此の傾向を認めます。独り政治家外交官と言はず、総じて所謂支那問題研究者が、専ら其力を傾倒する対象は、支那現前の政治的・経済的・乃至社会的現象でありま引。固より支那時局の種々相を明確に観察することは、支那に対する日本の正しき関係を確立する上に、是非とも必要なことに相違ありませぬ。さり乍ら総ての葛藤は、唯だ夫自身だけでは閑葛藤たるに過ぎないのであります。日々支那に起りつ」ある大小の出来事も、出来事それ自身に意義あるのでなく、其の背後に流れる大勢を洞察する手がかりとして、初めて価値を生じて居るのであります。
 この道理は、明白至極の事柄であるに拘らず、現代政治家の等しく看過し去つて顧みざる所であります、日本の政治家外交官は、走馬燈よりも目まぐるしい支那の時局を追ひ廻してのみ居りますから、漸く一つの方針が立つた頃『は、時局は最早別個の場面に移つて了ひ、其の方針は役に立たぬことになります。それ故に吾国の対支政策は、いつも骨折損の草臥儲けに終ります。気違ひ馬の後から追ひかけるやうな此の無用の努力を、支那では『奔命に疲れる』と申して居ります。かくて私は、支那問題を正しく解決するためには、現代支那の表面に起伏する現象を観察するに止まらず、支那及び支那人に関して、一層深刻なる洞察を必要とすることを主張します。


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