[大川周明ネット - 先生の人となり]

一言で紹介すると

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 先生はマルチな活躍をした方なので、先生のことを知らない人に「大川先生はこんな人」と紹介するのにとても困ります。「大川周明ネットについて」では「法学博士、宗教学者、歴史学者、アジアの解放を目指す革命家、唯一のA級戦犯として法廷に立ち東条英機の頭をたたいた男、クルアーン全訳をしたイスラム教研究家」なんて書いていますけど、これだけの言葉を並べても紹介しつくせていませんし、いつもこんなに長い肩書きをつけていうのでは、こっちも疲れるし、相手にも伝わりません。
 なんだかんだ言って結局は「東条英機の頭をたたいた男」なんて紹介するしまつです。このサイトのトップページにもYoutubeの動画を貼り付けちゃってますからね。この映像だったらたぶん誰でも見たことがあるでしょうから、これを言えば「ああ、あの人ね」と誰でもわかる。でもこれじゃ、ただのヘンなおじさんですよね。実際、真理子の第一印象も「頭のヘンなおじさん」というだけで、だから名前も覚えませんでしたから。
 何か一言で、先生のことを的確に紹介できないか。ずっと考え続けてきましたし、今でも考え続けています。


 そんな中でのとりあえずの答えは「現世救済にこだわった宗教家」です。
 先生は青年期からキリスト教会の門をたたいたり、大学ではインド哲学を専攻したり、道会に深くかかわったり、そして晩年にはクルアーンを全訳したり、一貫して宗教とのかかわりをしてきた方です。しかし多くの宗教は、精神的な救済や死後の世界の救済を説くあまり、ともすると現世救済をおろそかにする傾向があります。
 しかし先生は現世救済にこだわりました。この世での幸福が達成されなければ意味がないと考えたのです。
 先生が高校時代(旧制の高校ですから今なら大学ですね。数え21歳です)にお書きになった『不浄中の真金を如何す可き乎』(PC携帯)。漢文的表現を多用した文語体の文章なので読みにくいですけど、ここで言わんとしていることは結局そういうことです。
 先生はクーデターにかかわったり政治結社を作ったりと、一見ちっとも宗教家っぽくないのですが、それは徹底して現世救済にこだわった結果のことです。今生きている社会をよくしようと思うから政治にかかわっていくのです。
 先生はよく、右翼とか国家主義者と紹介されることもあります。真理子もめんどうくさいときはそのように書いたりすることがあります。しかし先生のことを知れば知るほど、右翼とか国家主義者というレッテルに違和感を覚えます。松本健一や大塚健洋の『大川周明』では、どちらも冒頭で長々と、かたや「大川周明は右翼であるか」かたや「日本ファシズムと大川周明」という標題でこのことを論じています。
 学生時代にベルリンの壁崩壊という事件を目の当たりにした(別に現地にいたわけではなく、単に同時代を生きただけですが)真理子にとっては、そもそも右だの左だのという図式を信じていません。だからこそ逆に、「別に先生を右翼と言ってもいいかな。それがわかりやすいのならば」と思っているのですが、先生の現世救済活動が、多くの人には右翼のように映るということなのでしょう。